第二十二回 「重力と恩寵」 シモーヌ・ヴェイユ:著 田辺 保:訳(ちくま学芸文庫)
今回の参加者:私、姉、シュガさん
シュガさん「今121Pなのだけどまったく内容が頭に入ってこない」
こんなLineがシュガさんから送られてきたのが読書会前日、深夜十一時でした。
何と残りページ数231P。
100%読了不可能です。なぜなら私はこの一ヶ月、暇な時間を全てこの本に当てていました。それほどの重量のある本だったのです。
しょうがないので私は徹夜でシュガさんに解説をするためのノートをせっせこまとめていきました。
そして当日、昼12時……
シュガさん「読み終わったぞー」
う……うそでしょ。私の徹夜は……一ヶ月は……。
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第二十一回 「バイバイ、エンジェル」 笠井 潔 著 (創元推理文庫)
今回の参加者:私、姉、シュガさん
今回の課題図書は姉から出されたものでした。姉はすでに読み終わっています。
文庫裏のあらすじを読むと
『ヴィクトル・ユゴー街のアパルトマンの広間で、血の池の中央に外出用の服を着け、うつぶせに横たわっていた女の死体には、あるべき場所に首がなかった! こうして幕を開けたラルース家を巡る連続殺人事件。』
という一文から始まります。面白そう! と思ってページをめくろうとしたら
姉「首がない理由が分かったら100円上げるよ」
姉のこの一言により私は「バイバイ、エンジェル」に真剣に取り組むことになってしまったのです。
たかが100円。されど100円。私はコピー機で目次にある街の略図を印刷し(10円)、ノート(100円)に人物相関図を書き、初めてミステリーに本気で挑みました。
今までミステリーを読む時は何となく頭で考えているだけだったのですが、今回は人物のアリバイを全て図解し、この命題を解き明かそうとしたのです!
297ページまでに答えを導きだせとのお達しであったので、私は何とか自分で答えを導き出して外出中の姉にLineを送りました。
姉「×」
私の長文の推理をまさかの絵文字で返す姉。優しさはないのかしら。
まるで今回の主人公ナディアのような心境でした…。
〈ここからネタバレになるので、これから読む人は気をつけてください!〉
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第二十回 「IQ」 ジョー・イデ 著 熊谷千寿 訳 (ハヤカワ文庫)
今回の参加者:私、姉、シュガさん
シュガさん「なんかこう、何も考えず楽しいの読みたいよね。読書会も『楽しかったー』で終わるような」
今回の課題図書を選んでいる私にシュガさんはそう言いました。
私「じゃあ最近話題のミステリー小説にします? こないだヤフ―ニュースで見たんですけど、声優の池澤春菜さんがおススメしてて気になってて」
シュガさん「ほうほう。どんな本なの?」
私「黒人の探偵が・・・」
姉、シュガさん「絶対はなすこといっぱいあるやつじゃん」
私「?」
というわけでジョー・イデさんの「IQ」になりました。
そして期待して読んでみたのですが・・・何かいまいちしっくりこないまま読み終わってしまいました。首を傾げながら読書会に向かうとシュガさんが一言、
シュガさん「いやー! 本当に面白い小説だった!」
この人との感性が合う読書はいつやってくるのでしょうか・・・。
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第十九回 「罪と罰」 ドストエフスキー 著 工藤精一郎 訳 (新潮文庫)
今回の参加者:私・お姉ちゃん・シュガさん
これは私の何の罪への何の罰なのでしょうか・・・
いままでこの読書会でも年末年始には「細雪」や「白鯨」など、本として重い題材を扱うことが多かったです。重い題材を扱うときは全員でその本を決め覚悟を持って決めました。
それ以外の日は、三人で順繰りと読む課題を決めていくのです。そして次の選定者はシュガさんでした。
シュガさん「じゃあ罪と罰で」
私・姉「!?」
な、何を言っているんだ、この人は・・・。
いや、いつかは読まなきゃなと思うのですが、いまじゃ、いまじゃなくても・・・。
色々あって「罪と罰」を読むのが4回目になるお姉ちゃんは悟りきった目を明後日の方向に向けていました。
シュガさん「ま、私は読むの初めてだから。じゃ、よろしく~」
その軽い言葉とは真逆の重い読書に、私の読む手はなかなか進みません。
とにかく文字、文字、文字! いや本だから当たり前なのですけど、なんかページいっぱいに埋まる黒。真っ黒に見えます。
それにとにかく心情の描き方がえぐい。どこまでも掘って掘って綴られる心情に私のHPは削られていきます。
そして統一されない呼称! 一人の人物にどんだけ呼び方あるんですか! ラスコーリニコフとロジオン・ロマーヌイチとロジャーが同じ人物って!
そんな私がミレニアム三部作に浮気しても仕方がないと思うのです。なぜあの五千ページほどの物語はすらすら楽しく読めるのに、この真っ黒な本は読めないのでしょうか。
ふと頭を抱えながら図書室をふらついていると悪魔の本が私の目の前にあらわれたのです。
「罪と罰―まんがで読破―」
すぐさま私はLINEをシュガさんに送りました。
私:「読めなかったらまんがで読破、罪と罰よんできます!」
シュガさん:「そんなの読んでる暇あったら原作読め」
私:「(´・ω・`)」
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第十七回 「水滸伝」 施耐庵 作 松枝茂夫 編訳(岩波少年文庫)
シュガさん「いやーいま幻想水滸伝ってゲームにはまってるんだよねー」
この発言を聞いたときから嫌な予感がしていました。
確かに面白いです。色々な事情を抱えた個性的な仲間に出合い、集めた108人の仲間の中から6人のパーティを決めて敵に立ち向かう。ちまたではⅡが最高傑作と言われていますが、私的には最初にプレイしたⅢが大好きです。使うキャラクターは章ごとに違い、三人の主人公の視点からゲームをプレイしていきます。しかしストーリを進めて行くとその三人の物語が交差し、胸の熱くなる展開に思わず昔プレイした興奮がよみがえ……
シュガさん「というわけで水滸伝ね」
と現実逃避をしている間に「水滸伝」になってしまいました……。
ゲームならいいんですが、読む形として108人のキャラクターを追うことは果たしてできるのか。そして楽しめるのだろうか。そんな不安を抱えながら水滸伝を読み始めるのでした。
そして読書会当日。
姉「……どうだった?」
私「……びみょー」
姉「あんたが微妙ならシュガさんは好きだろうね」
私「うーんそんな気がする」
待ち合わせ場所でそんな話をしていると、遅れてきたシュガさんが第一声
シュガ「いや面白かったねぇ!」
私とシュガさんが二人とも面白いという作品は現れるのでしょうか。
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第十六回 「増補新訂版 アンネの日記」 A・フランク 著 深町 眞理子 訳(文春文庫)
年末に毎回行われるのが「読まなきゃいけない気がするけど読む気力が起こらない本選手権」です。
三人が三つの紙に選手権の代表にふさわしい本を書きます。
それをビニール袋にいれて取り出し、その本を読むわけです。
過去には「細雪」や「白鯨」といった本に主に私は苦しめられ続けてきました。
今回私が書いた本のタイトルは「エミール/ルソー」「すばらしい新世界/ハクスリー」「死霊/埴谷雄高」です。「すばらしい新世界」以外出たら死にます。私はずっと「すばらしい新世界でろ!」と祈り続けました。
そしてシュガさんが引いた神の右手に開かれたのは……
シュガさん「あ、わたしのだ」
『アンネの日記』
うおぅふ。こんな声がでました。アンネの日記か~そうか~。……。
なんとか気持ちを切り替えることにし、一ヶ月の猶予がありましたので読書会十分前に読破しました。
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