第三十三回「Lilith」 川野芽生
私たちの読書会史上、初の試み。短歌集です!
私は短歌集が好きで一度は短歌集を読書会でやってみたいなと思っていました!
「ねむらない樹」という短歌のムック本を読んでいるときに評判だった、川野芽生さんの「Lilith」を今回の課題図書にしてみました!
短歌の常識や知識はないけれども、みんなで楽しく色々解釈できればと思っています!
姉「短歌って苦手なんだよね。一時を切り出したものが苦手だし、私は始まりと終わりが明確にある作品の方がすきだなぁ」
不安しかありません!(´・ω・`)
シュガさん「今回の短歌集教えてくれてほんとありがとう! こんな言葉を大事にしながら短歌を読む人がまだまだいるんだね! 私感動したよ!」
その不安とは裏腹にシュガさんの好感触な一言から読書会は幕をあけました。
シュガさん「今の短歌ってノンフィクションな歌が多くない? それも楽しいんだけど、こういうふうに短歌を言葉の力でフィクションの世界に連れていく形が本当に好きだったんだよね。例えば」
トンネルが裏返るやうに夜が来てわたしは葡萄の種を吐き出す
シュガさん「トンネルが裏返るわけがないんだよ。でもとっても幻想的で素敵な上の句じゃない? そこに『私は葡萄の種を吐き出す』って下の句思いつくかね!? こんな幻想的な一文からふっと力が抜けるような完璧な落とし方。本当に素晴らしい一首だと思った!」
私「(おぉ……シュガさんがかつてないほど興奮していらっしゃる……)」
姉「旧仮名遣いも効果的な気がしたんだよね。私たちが現代で使っている言葉ではないから、その言葉自体が現実から距離を取ってくれている気がして」
シュガさん「私もそう思う。書き言葉にしかない言葉の重みがあって、何とかその言葉で現実から放たれようとしてる感じがするんだよね。この短歌もそんな感じがしてすごい好き」
真夜と云ひ真冬といへりその闇の芯を見たりしものなきままに
シュガさん「どんな言葉でも芯を捉えることができない。そこを表現することで芯に迫っている気がして、言葉を使うってこういうことなんだなって思う」
私「お姉ちゃんは何か好きな短歌あった?」
姉「私はこれかな?」
ゆゑ知らぬかなしみに真夜起き出せば居間にて姉がラジオ聴きゐき
姉「不安な気持ちがあったり怖い夢を見た時に、なんか起きて居間に家族がいると安心しない? あなたもラジオ好きだしね」
私「深夜のラジオの方が面白いんですよ……」
シュガさん「わりと現実に根ざした歌の方が好きみたいね」
姉「そうかも。ほかには」
少女にて薔薇の病葉むしるとき隣家に女主人惚けつつ
姉「健康な者が弱っている「もの」を排除して、それが現実の世界にも起きる前兆みたいな感じで読んだ」
私「いやな読みかたですね」
姉「うっせ。あなたが好きだった短歌は?」
私「(うっせって……)私は」
私「比喩表現大好きなんですよ。この歌おいしそうだし綺麗でよくないですか?」
シュガさん「まあ綺麗ではあるよね」
姉「おいしそうだね」
私「なんで二人とも棒読みなんですか。あとは」
狂恋を逃れむがため木となりし少女らならむ花のなき森
私「花は枯れるし摘まれるし。だったら木として自立するしかなくなった少女たちの森ってなんだかかっこよくないですか」
ほんたうはひとりでたべて内庭をひとりで去つていつた エヴァは
姉「なんかこうフィクションの物語なんだけど、そこには何か現実に対する怒りみたいなものがあるよね」
短歌集の栞文にある水原紫苑さんの文章でもこう書かれています。
「川野芽生の短歌は男性社会のみならず、大きくこの世界という制度そのものを告発する。」
シュガさん「うん。本当に今回の短歌集はよかった! あんたはえらい!」
ここまでシュガさんに褒められたのは初めてでした!
シュガさんを唸らせる短歌集を探し続ける旅は始まったばかりです!