映画鑑賞② 「ジョジョ・ラビット」
あまりにも余韻が素晴らしい映画だったので、ぜひ色んな人に見て欲しい!
そんな気持ちを込めて感想を書いていきたいと思います。
今の時代、「言葉で語らない」という選択肢を取ることがいかに難しいことか。
SNSや私もやってるブログのように自分の意見を語る場をたくさん与えられ、また受け手側も分かりやすさを好み、共感の声を求め彷徨い歩きます。
そんな中で「ジョジョ・ラビット」という映画はとても丁寧に「言葉で語らない」ことを選択し、見ている側の想像力を常に刺激します。語られないことをどうしても想像せずにはいられないのです。
そして語られないからこそ印象に残る映像の美しさ。小物から洋服、そして画面全体の明るさ。戦争という重い内容の中である種の爽やかさを感じ、1シーン1シーンが絵画のように記憶に残ります。
描かれる時代は第二次世界大戦中のドイツ。10歳のジョジョには“空想上のともだち”アドルフ・ヒトラーがいます。ひ弱なジョジョはこの“空想上のともだち”から叱咤を受け、何とか立派なナチス党員を目指しますが、上手くいかず、大けがをして家で療養することになります。
戦中でも明るくたくましく働く母ロージ―の留守中、ジョジョは亡くなった姉インゲの部屋で隠し扉を発見します。その中にいたのはユダヤ人の少女エルサでした。
ナチス党員を目指す10歳の少年の目の前に現れたユダヤ人。彼は“空想上のともだち”と力を合わせながらこの危機を脱しようとするのですが……。
隠し扉で思いだされるのがアンネ・フランクです。ナチス党員に見つかったユダヤ人がどうなってしまうのか。私たちは無意識に結果を想像してしまいます。
しかし見つけたのは、ナチスに傾倒するものの、ひ弱ですぐに逃げ腰になるので、周りの人間から「ジョジョ・ラビット」と呼ばれてしまう10歳の男の子です。
その子とエルサとの危なっかしい、けど10歳の男の子らしい純粋なコミュニケーションが軽妙で楽しいのです。
それだけではなくこの映画には楽しいシーンがたくさんあります。ジョジョの現実の親友ヨーキーはジョジョと会ったら絶対ハグするので、とっても可愛くて見ていてほっこりします。ナチス党員の大尉であるキャプテンKとのやり取りはどこか間抜けで笑えます。
そんな軽妙でコメディタッチのシーンが多いにも関わらず、当時の悲惨な現状を想像せずにはいられません。登場人物たちはコミカルで前向きな人が多いのですが、だからこそ語られない悲しい現実が浮き彫りになっていくのです。
だからこそ言葉では言い表せない素敵なラストシーンへとつながります。
あのラストシーンを見て、映画館から出て家に帰る間に、何回この映画のことを思いだし、何回哀しい気持ちになって、何回素敵な作品だったなと思わされたことでしょうか。
分かりやすいことが悪ではないと思います。ただ分かりやすいものに、私たちは流されやすいのも事実です。それはこのナチスの考え方みたいに。
だからこそ何を「言葉で語らない」のかを丁寧に選び、受け手側の想像を掻き立て、心に深く印象付ける「ジョジョ・ラビット」は素敵な映画だと思います。
ぜひぜひ劇場で!