第十四回 「地底旅行」 ジュール・ヴェルヌ作 朝比奈弘治訳 (岩波文庫)
今回の参加者:私、お姉ちゃん、シュガさん
ある日、シュガさんは言いました。
シュガさん「冒険がしたい」
私・姉「!?」
シュガさんはたまに冒険がしたくなります。今回の行き先は地底だと言うことで、ジュール・ヴェルヌの「地底旅行」に決まりました。
だいぶ前にもシュガさん先導で冒険をしました。その時は白い鯨を倒しにいきました。私は鯨に出会うまでの長い長い道のりに、もう冒険小説はこりごりだったのですが、シュガさんだけはキラキラした目で「冒険サイコー!」と言っていたのを覚えています。
冒険小説の魅力をシュガさんは情報量だと言います。冒険小説を描く作者の造詣の深さが冒険のリアリティを呼び起こすのだそうです。
(※ネタバレがあるので注意してください)
今回の地底旅行の主人公はアクセル。彼は伯父のリーデンブロック教授に無理矢理連れて行かれる形で地底の旅に向かいます。
このリーデンブロック教授というのが熱い探求心の持ち主なのです。
ある日お店で一冊の古本を買います。その中に挟まっていた暗号で書かれていたメモを解読し、数年前に有名な錬金術師が地底の旅をしていた事実を知ります。
すると教授は早速ひとこと。
「わしの旅行鞄を詰めてくれ。」
いやいやいや。リーデンブロックさん。ちょっと冷静になってください……。地底なんて熱いだけでしょ。私、知ってます。核とかマントルとか。中学校の理科の授業でならいました。
アクセルさんは、そんな私たちの代弁者です。リーゼンブロック教授に地底の旅行は科学的に不可能だとしっかりと言ってくれるのです。それに対して教授はこういいます。
「いやはや! 理論というのは困ったものだ! あの哀れな理論というやつのおかげで、どれほど迷惑することか!」
「いずれにしても言ってみればわかるだろう」
科学的な仮説はたくさんあります。しかし私は地底をこの目で見たことあったでしょうか。立派に自信をもって、地底に何もないと言えるのでしょうか。
未知の世界を自分の目で確かめる。
旅をいやがっていたアクセルでしたが、このリーデンブロック教授の考えを聞いてだんだんやる気になってきます。
私もアクセルと一緒にワクワクを感じるようになってきました。
そして彼らはアイスランドにある地底の入口を探し出し、アイスランドの地元ガイドを一人雇って三人で地底へと入ります。
しかし地底旅行はそう一筋縄ではいきません!
道に迷ったり、道に迷ったり、道に迷ったり・・・
道に迷ったことしか印象に残ってない・・・
い、いや!食料がないときの道に迷う絶望感はハンパないんです!(決して食い意地がはっているからここしか印象に残ってないなんてことはないです!)
アクセルくんはずっと弱音を吐くのですが、リーデンブロック教授は今の時代だったらパワハラになりかねないごり押しの論理でアクセルくんのケツをたたきます。
(シュガさんの「リーデンブロック教授の善の心を取り戻すにはアクセル君の体が傷つくしかない」という台詞が印象的でした)
そんな教授とアクセルくんに力強い助っ人がいることを忘れていませんか?
そう・・・
アイスランド人で地元ガイドのハンスさんです!
彼はあらゆる二人のピンチを救います。
なにが起こっても一人冷静で何事にも動じず、みんなが疲労困憊で動けなくなれば一人で水を探しに行き、水を得るために壁を破壊し、どんなことが起こっても旅の荷物だけはしっかり守る。
もう本当にハンスさんがいなかったらすぐ二人とも死んでいました。私たちの中では超人ハンスと呼ぶことにしました。(どっかできいたことあるような・・・)
そして彼らは地底の中にあるはずもない海を発見し、そこからさらに未知の世界を探して先へ進もうとするのですが……。
先へ進むことが上手くいかず、地上に戻ってしまうのです。
ちょっと消化不良な終わり方。ただお姉ちゃんは言います。
姉「最後に未知の領域があるから、ワクワクする気持ちって残らない? 想像の予知があって楽しいよね」
たまたま読書会後にバック・トゥ・ザ・フューチャー3を見ていたのですが、タイムマシンを作ったドクの台詞を聞いてびっくりしました。
「ジュール・ヴェルヌの小説を読んで科学者になろうと決めた」
明かされない未知の領域があるからこそ、科学の力で解き明かそうとする意欲が出てくるのかもしれません。
「未知の世界」はジュール・ヴェルヌからの贈り物かもしれませんね。(*´ω`)
そしてその科学を解き明かそうとするリーデンブロック教授のパワーあふれる言葉も物語の魅力です。
最後、地上に戻れるか戻れないか生死の分かれ目のとき、弱音を吐くアクセルくんに彼は言いました。
「よいか、意志を持った人間であれば、心臓が動いているかぎり、肉が生きているかぎり、絶望に陥ることなど、わしは認めん!」
- 作者: ジュール・ヴェルヌ,朝比奈弘治
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1997/02/17
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